限られた時間で効率よく体を変えたいと考えるビジネスパーソンは多いはずです。今回は福岡・薬院のパーソナルジム『GROSE』代表の古屋敷憲佑氏に取材。古屋敷氏は高校生部門のボディコンテストで日本一に輝き、独立からまもなく丸3年を迎えます。
限られた時間で"効率的な脂肪燃焼"を目指すには、何から始めればいいのか。初心者でも今日から実践できるメソッドと、続けるためのマインドを伺いました。
経歴・所属:パーソナルジム『GROSE(グローズ)』代表。福岡・薬院でラグジュアリーな完全個室のパーソナルジムを運営する。高校時代にボディコンテストの高校生部門で日本一を獲得し、その後も美ボディコンテスト(スポーツモデル部門)で数多くの出場経験を持つ。大手パーソナルジムでの勤務を経て、21歳で『GROSE』を創業し、今年9月で丸3年を迎える。初心者にも「なぜこの種目をやるのか」を丁寧に言語化する指導に定評がある。
先輩に誘われた筋トレが高校生日本一へとつながった
── 簡単なご経歴と、筋トレを始めたきっかけを教えてください。
高校時代はバレー部だったんですけど、その部活の先輩が筋トレ好きでしてね。部活終わりに「よっしゃ、筋トレするぞ」って毎日のように誘われて、一緒にやっていたんです。やってみたら、どんどん体が変わっていくんですよ。それが楽しくて。YouTubeで有名なボディビルダーを見るようになって、「こんな人たちみたいにかっこよくなりたい」と本気で打ち込み始めたのがきっかけです。
── そこから、高校生で日本一になられたとか。
そうなんです。先輩が卒業してからも、一人で部活終わりにトレーニングルームへ行って、夜中まで残ってやっていました。学校を出るのが、毎日いちばん最後でした(笑)
そしたら校内でも「あいつ、体がすごいな!」って有名になりました。ある友達のお父さんがボディビルのコンテストに出ている方で、「そんなに頑張るなら大会に出てみたら」と背中を押してくれたんです。それで高校2年から3年に上がる春休みに東京の大会へ出て、"高校生部門で日本一"になりました。
独立し体と心と人生を美しくする理念へ行き着いた
── 高校卒業後は、すぐにトレーナーの道へ進まれたのですか。
いえ、工業高校だったので、ほとんどの同級生と同じように就職したんです。本当はフィットネスの仕事がしたかったんですけど、親が厳しく一度、就職をして欲しいと言われました。
とりあえず土日祝休みで定時に上がれる地元企業を選んで、筋トレを続けていました。そうしたら20歳のとき、大手パーソナルジムの方から「トレーナーをやってみないか」と声がかかって。これは行きたい、と。北九州の小倉から福岡市に出てきて、就職したんです。
── そこから独立までは、早かったそうですね。
早かったですね。入社して半年で店長を任されたんですけど、入社1年ほどで退職を決意をして、その4ヶ月後に『GROSE』を立ち上げました。21歳のときです。今度の9月30日で、ちょうど丸3年になります。一貫しているのは、やっぱり高校時代の原体験ですね。一度「面白い」と決めたら、とことんやる性格なんだと思います。
── ジムの理念についても教えてください。
『GROSE』の信念は、「"身体を美しく、心を美しく、人生を美しく"」という考え方です。
体が変わると、自信が生まれる。その自信がつくと、仕事や人間関係にも前向きになれるんですよ。だから私はトレーニングを、ただ筋肉をつけるためのものではなく、"自分自身を高める時間"だと考えているんです。一時的なダイエットだけでなく、その人の人生が豊かになるサポートを大切にしています。
なぜこの種目かを言語化する指導が初心者の挫折と怪我を防ぐ
── 指導の現場で、特に大切にされていることは何でしょうか。
運動をしたことがない初心者の方でも、安心して取り組めるように、"わかりやすく丁寧に伝える"ことを一番大切にしています。トレーニングって専門用語も多くて、最初は不安に感じる方がほとんどなんですよ。だから私は、「なぜこの種目をやるのか」「どこに効いているのか」「どんな効果やメリットがあるのか」を、一つずつ言葉にしてお伝えするようにしています。
── 「とりあえずベンチプレスをしましょう」では終わらせないわけですね。
そうなんです。前に通っていたジムでは、ただ「スクワットしましょう」と言われるだけで、なぜやるのか、どうすればどう変わるのかまでは教えてもらえなかった、というお客様も多いんです。
正しく理解して、お客様自身が納得して取り組むと、"怪我の予防"にもつながるし、結果も出やすくなる。「これなら続けられそう」と思ってもらえる指導を心がけています。
脂肪を落とす土台は食事にあり筋トレだけでは痩せない
── 効率的に脂肪を落とすうえで、最も重視すべき考え方は何でしょうか。
基礎代謝も大事なんですけど、筋トレや有酸素より先に、まず見直すべきは"一日三食の食事"です。はっきり言うと、トレーニングをどれだけ頑張っても、食事が乱れていれば痩せることはほぼ無理なんですよ。
それくらい食事が土台なんです。まず食事で体を変える土台を作る。その上でトレーニングを入れると、筋肉量が増えて引き締まり、結果として脂肪燃焼の効率も上がっていく。だから僕の考えは、「"痩せるためには食事、より美しく変わるためには筋トレ"」なんです。
── 具体的には、どんな食事を意識すればいいですか。
基本は"低脂質・高タンパク"です。タンパク質と炭水化物はしっかり摂って、脂質を摂りすぎないこと。お米などの炭水化物も、ちゃんと食べて大丈夫なんですよ。肉や魚がなければ、プロテインで補えばいいと思います。
脂質も、魚の脂は"良い脂"なので、むしろ摂ってほしいくらいです。避けたいのは、揚げ物や外食の過剰な油ですね。極端に食事を抜くのは逆効果で、結局続きません。
── コンビニや外食で選ぶなら、何がおすすめでしょうか。
コンビニなら、プロテイン、サラダチキン、パックの魚、ゆで卵、おにぎり、そば、サラダですね。
この辺りはすぐ買えますよね。逆に避けたいのが"パスタ"。外食やコンビニのパスタは、美味しくするために油をかなり使っているので、脂質が高くなるんです。自炊で低脂質のソースを作れるなら大丈夫ですよ。外食なら、唐揚げ定食より"焼き魚定食”、お酒は、蒸留酒のハイボールやウイスキーがいいですね。
── 夏は飲み会や何かとイベントも増えます。食べすぎた日は、どうすれば良いでしょうか?
飲み会の日は、もう楽しんで食べていいんですよ。1日食べたくらいでは太りません。大事なのは"次の日"です。「昨日食べたから、今日は無理に美味しいものを食べなくていいや」と、自分で調整する。それだけで大丈夫なんです。ただ、調整は"抜く"こととは違いますよ。
3食はちゃんと食べて、揚げ物を控えめにする。ジムに通っている方なら、体を動かしてカバーすればいいんです。
筋トレは投資で有酸素は日払いだからビッグスリーを優先する
── 脂肪燃焼というと有酸素運動を思い浮かべますが、筋トレはどう関わるのでしょうか。
まず大前提として、"部分痩せ"はほぼ無理なんですよ。脂肪は末端から落ちていくので、足先・指先から痩せて、お腹やお尻は最後まで残るのが自然なんです。
その上で有酸素か筋トレかと言われたら、僕は圧倒的に"筋トレ"を優先します。よくお客様にお伝えするのが、「"筋トレは投資、有酸素は日払いのバイト"」という例えなんです。
── 投資と日払い、ですか。
はい。日払いのバイトは、その場でお金がもらえますよね。有酸素も同じで、やった分だけその日に消費する。でも筋トレは、筋肉量を増やすことで、その先の何年にもわたって"消費しやすい体"を作ってくれるんです。
未来の自分への投資という意味で、圧倒的に効率がいい。種目としては、初心者の方なら、脚の"スクワット"、胸の"ベンチプレス"、背中の"ラットプルダウン"や懸垂。いわゆる"ビッグスリー"ですね。大きな筋肉から鍛えると、全身の運動効率が上がって、限られた時間でも成果につながりやすくなります。
── 有酸素は、筋トレの前にやるといいとも聞きます。
脂肪燃焼だけが目的なら、それでもいいと思います。ただ、最高のパフォーマンスで筋トレをしたいなら、疲れていない状態で先に筋トレをして、その後に有酸素をするのがおすすめです。
もう少し効率を上げたい方には、"HIIT"も良いですね。
たとえば20秒の全力ダッシュと10秒の休憩を6セット繰り返せば約3分、10セットでも5分ほどなんですよ。短時間で心拍数を上げられるので、長い有酸素より続けやすい。あとは階段を使う、こまめに歩くといった"小さな積み重ね"も、数ヶ月で大きな差になります。
重さより正しいフォームを優先すると怪我を防ぎ最短で理想に近づく
── 初心者がケガなく成果を出すために、まず押さえるべきことは何でしょう。
重さを追わないこと"ですね。初心者の方は早く結果を出したくて、つい重い重量を持ちがちなんですけど、いちばん大事なのは"正しいフォーム"なんです。フォームが崩れたまま続けると、狙った筋肉に効かないどころか、怪我の原因にもなる。最初は軽い重量でいいので、どこの筋肉を使っているかを意識しながら、一つずつ丁寧に動作を覚えること。土台ができれば、重量は後から自然と伸びていきます。
── フォームを身につけるには、どうすればいいですか。
仕事でも「基礎が大事」とよく言いますよね。筋トレも土台が全てで、焦って近道を選ぶより、正しいフォームを身につけたほうが、結果的に早く理想の体に近づけるんです。学ぶなら、YouTubeや本もいいですが、一番のおすすめは"一度パーソナルジムに行く"こと。
高い金額で契約しなくていいんですよ。「学びに行くぞ」と、その1時間の1万円を惜しまない。それが、なりたい自分への近道になりますから。体験だけでも、入会しなくても、行ってみるのが一番です。
100%ではなく60%で続けるマインドセットが成果を左右する
── 多忙で時間が不規則な人でも、続けられるコツはありますか。
いちばんは、「"今日から100%やるぞ"としないこと」です。毎日完璧に食事を整えて、毎日筋トレして有酸素もして……なんて思わなくていい。全部マインドなんですよ。「ダイエットしなきゃ」と思い込むと、不思議と「あれ食べたい、これ食べたい」が出てくる。でも「いつでも食べられる」と思えば、案外そうならない。だから、"こうなりたいからこうする"と軽く捉える。やらされている感がないほうが、長く続くんです。
── 数字でいうと、どれくらいを意識すればいいでしょう。
競技に出るなら100%必要かもしれませんが、痩せたい、マインドを変えたいという方なら、まずは"60%"を目指しましょう。100点満点を狙うと、挫折してしまうんですよ。「やらなきゃ」という変なプレッシャーは、かえって破滅につながる。しんどいから続かない、続かないからやめてしまう。完璧じゃなくていいので、"長く続けること"が何よりのポイントです。始めて10日くらいは食欲との戦いがありますが、そこは通過点。焦らないことですね。
筋肉は何歳からでも成長し体づくりは人生を豊かにする自己投資になる
── 最後に、これから体づくりに挑戦するビジネスアスリートへ、メッセージをお願いします。
人間は、必ず衰えていきます。これは揺るがない事実です。でも、"筋肉は何歳からでも成長する"。トレーニングすれば、ちゃんと応えてくれるんですよ。だからまずは、自分がどんな人生を送りたいかを考えて、今日5分だけでも動いてみてほしい。体が変わると、自信がつく。自信がつくと、生活習慣も考え方も変わって、その前向きな姿勢は家族や仲間にもいい影響を与えていきます。体づくりは、見た目を変えるだけじゃない。"人生をより豊かにするための自己投資"なんです。
取材を通して何度も語られたのが、「体が変わると、人生が変わる」という実感でした。古屋敷様のもとには、事業主や経営層、営業職、モデル、ゴルフやテニスの愛好家、健康維持を目指す70代まで、目的の異なる人々が通うという。体型の管理が、見た目だけでなく自信や信頼感にもつながっていく——ビジネスアスリートにとって、体づくりが"自己投資"である理由がよくわかります。
最後に印象的だったのが、女性に多いという誤解への一言だ。「筋肉がつくのが嫌」と敬遠する人は少なくないが、「"そんなに簡単には筋肉はつきません"。それで筋トレを諦めるのは、もったいない」と古屋敷様は言う。完璧を目指さず、まずは60%で、今日5分から。落ち込むくらいなら、スクワットを10回。その小さな一歩が、夏のその先の自分を変えていくでしょう。
