ビジネスアスリートの調査・研究メディア|ATHLETE WAY

現役ラグビー選手のデュアルキャリア事例

ビジネスアスリートの調査・研究メディア|ATHLETE WAY » 調査・研究一覧 » 現役ラグビー選手のデュアルキャリア事例

現役競技を続けながら働くデュアルキャリアは、本人の努力だけで成立するものではありません。競技時間の確保、仕事上の成果責任、職場での理解、そして本人がどのような環境で力を発揮しやすいかが関わってきます。

ここでは、現役ラグビー選手として競技を続けながら営業職に取り組むTさんの事例をもとに、競技継続と仕事の両立を支える条件を整理します。特に、チームで目標を追う感覚、時間の使い方、成果への向き合い方が、デュアルキャリアの実践にどう関係しているのかを考察します。

プロフィール
現役ラグビー選手 Tさん

ラグビーの名門・國學院栃木高校で全国を経験し、大学でも活躍。プロ入り目前で道を断たれるも、社会人として働きながら競技を継続。建設機械、外資系保険の営業を経て、現在はタミヤホームでデュアルキャリアを実践中。チームで勝利を目指すスピリットを武器に、ビジネスのフィールドでも躍動する。

現役ラグビー選手 Tさん

プロ入り目前での進路変更


―ラグビー一筋のキャリアだったとお聞きしました。

小学校から大学まで、ずっとラグビーしかしてこなかったですね。高校は強豪の國學院栃木に進学し、2年連続で花園(全国大会)に出場しました。大学でも副キャプテンを務め、リーグのベスト15に選んでいただくなど、自分なりにやりきったという自負はありました。


―大学卒業後はプロを目指されていたのですね。

はい、トップリーグのチームからお声がけいただき、ほぼ入団が決まっていたんです。でも、大学4年の秋という本当にギリギリのタイミングで、チームが「外国人選手を獲りたいから待ってくれ」と…。結局、その話は流れてしまい、他のチームを探す時間もありませんでした。「トップリーグでやれないなら意味がない」とその時は思い、ラグビーを辞めて一般企業に就職する道を選びました。

「仲間とでしか頑張れない」自分に気づいた社会人経験


―一度はラグビーから離れたのですね。

半年くらいは全くやっていなかったのですが、やはり体が疼くというか(笑)。先輩に誘われてクラブチームでプレーを再開したら、やっぱり楽しくて。そこから、より高いレベルを目指せる今のチームに移籍し、働きながらラグビーを続ける生活が始まりました


―お仕事はどのような経験を?

新卒で建設機械のレンタル会社に入り、5年間、法人営業を経験しました。いわゆる“THE・サラリーマン”という感じで、社会人としての基礎を学びました。ただ、成果を上げても給与に反映されない環境に、やりがいを見出せなくて。

もっと厳しい世界に挑戦しようと、次に外資系の保険会社に転職しました。完全実力主義の世界は刺激的でしたが、そこで「自分は仲間と一緒に頑張る環境じゃないと、力を発揮できないタイプなんだ」ということに気づかされたんです。


―そこからタミヤホームへ転職されたきっかけは?

スポーツ系の人材エージェントを介して出会いました。最初の面談が、社長との食事だったんです。赤坂の美味しいお店でカレーを食べながら(笑)。社長自身も元ラガーマンということもあり、仕事の話はほとんどせず、「うちはスポーツをやってる子を応援したいんだ」という話に終始しました。
その熱意と人柄に惹かれて、「この人のもとで働きたい」と、その場で入社を決めました。正直、解体工事の会社だというのは、入社が決まってから詳しく知ったくらいです(笑)。


―デュアルキャリアを実践する上で、会社の環境はいかがですか?

最高ですね。スーパーフレックス制度が導入されているので、時間の使い方は自分次第。平日の夜や土日の練習に参加しながら、自分でスケジュールを組み立てて営業活動ができます。もちろん、成果を出すことが大前提ですが、「やるべきことをやっていれば、競技との両立を全力で応援してくれる」この環境は本当にありがたいです。


―仕事のどんなところに面白さややりがいを感じますか?

「自分のやり方」で勝負できるところです。会社から細かく指示されることはなく、どのエリアで、どんなお客様に、どうアプローチするかは全て自分次第。自分という人間を信頼してもらって、「君に任せるよ」と言っていただけた瞬間は、最高のやりがいを感じますね。


―ラグビーの経験が仕事に活きていると感じることは?

間違いなく「チームプレーの大切さ」です。個人プレーが中心だった前職の保険会社では、正直サボろうと思えばできてしまいました。でも今は、営業部というチームで動いています。誰かの成績が落ちていれば皆でカバーし、誰かが大きな契約を取れば「自分も負けてられない」と燃える。この感覚は、まさにラグビーと同じです。
高校時代、厳しい練習を乗り越えられたのも仲間がいたから。一人では戦えないこと、仲間がいるから頑張れることを身をもって知っている。それが今の仕事の原動力になっています。

自分の人生に正直に。
デュアルキャリアの先に見据える未来


―今後の目標を教えてください。

タミヤホームと、所属するラグビーチーム。この二つを大きくしていくことに携われるのが、今一番の楽しみです。どちらも、まだまだこれからのチーム。自分が成長の核となることで、会社やチームが大きくなっていく過程を仲間と一緒に味わいたいです。


―最後に、新たなキャリアを考えるアスリートへメッセージをお願いします。

「自分のやりたいことに正直になる」のが一番だと思います。競技だけをやる、仕事だけをやる、あるいは僕のように両方やる。正解は一つではありません。人生は一度きりなので、後から「あの時こうすれば良かった」と後悔しない選択をしてほしいです。
もし両立を目指すなら、相応の覚悟は必要です。でも、自分が本当にやりたいことであれば、きっと乗り越えられるはず。自分を信じて、進むべき道を選んでください。

本事例の考察

Tさんの語りから見えてくるのは、デュアルキャリアは「競技も仕事も頑張る」という意志だけでは成立しないということです。競技を続ける時間を確保できること、仕事では成果に責任を持つこと、そして本人が力を発揮しやすい環境を理解していることが、両立の前提になっています。
特に本事例で重要なのは、Tさんが「一人で成果を追う環境」よりも、「仲間と目標を追う環境」で力を発揮しやすいと気づいている点です。ラグビーで培われたチームへの帰属意識は、営業部の仲間と成果を追う感覚や、周囲に刺激を受けながら働く姿勢にもつながっています。

また、時間の自由度がある働き方は、競技継続を支える一方で、自己管理と成果責任をより強く求めます。Tさんの事例は、デュアルキャリアを「特別な働き方」として美化するのではなく、本人の適性、職場環境、競技への意思が重なったときに成立する実践例として捉えることができます。

本メディアでは今後も、研究者・指導者へのインタビューやケーススタディを通じて考察し、個人・組織・社会における新たな価値創出のあり方として発信していきます。